2008年に公開された福山雅治×堤真一出演の映画
「容疑者xの献身」
大人気だったテレビドラマ「ガリレオ」シリーズの劇場版です。
ラストシーン、石神はどんな気持ちで泣き叫んだのかと話題になりました。
そして、石神や花岡親子のその後が気になっている声も多くありました。
そこで、ラストのシーンの石神の慟哭「どうして!」の意味。
その後、石神と花岡親子はどうなったのか。
石神のいびつで切ない愛などを考察してみました。
「容疑者xの献身」あらすじ
ある日、顔面を潰され、指を焼かれた遺体が見つかった。
身元は無職の男、富樫慎二であることが判明した。
警察は富樫の元妻・花岡靖子(松雪泰子)をマークしたが、完璧なアリバイがあり捜査は難航。
刑事の内海(柴崎コウ)は、天才物理学者である湯川(福山雅治)に捜査の協力を持ちかける。
そんな中、花岡靖子の隣人が、湯川の大学の同期石神(堤真一)であることがわかった。
石神は、湯川が唯一天才と認めた男だった。
湯川はそんな石神が、この事件に深く関わっていることに気づく。
天才が仕掛けたトリックを、果たして湯川は暴くことができるのかーーー
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「容疑者xの献身」考察・感想(注:ネタバレあり)
どんなトリックを仕掛けたのかを考える楽しみもありましたが、どちらかというとヒューマン的な要素が強かった作品でした。
人にあまり興味がなかった石神の愛が、とても切なくいびつで、涙なしでは見られません。
石神のラストの慟哭や、その後はどうなったのか、少し気になった箇所などを考察してみました。
※ネタバレを含みますので、作品を見てからの閲覧をおすすめします。
鉢植えの鳥飾りが意味すること
花岡親子の玄関前には、パンジーの植木鉢が置かれていました。
そこにさされた鳥の飾り。
その鳥飾りが倒れてると、いつも石神は通りすがりにそっと直していました。
この行為は、花岡親子に対する石神の影ながらの想いが感じられます。
気づかれなくてもいい、ただそっと見守っていたい、そんな想いが感じられた場面です。
しかし事件後。
湯川と久しぶりの再会をした翌朝、石神は鳥飾りが倒れているのに気づいたにもかかわらず、気になりながらも鳥飾りを直しませんでした。
これは、天才の湯川には何一つ怪しまれるような行動を見せてはならないという、石神の予防線だったのでしょう。
そして、犯罪に手を染めてしまった石神は、もう以前のような温かい気持ちでは花岡親子を見守れなくなったという暗示だったのかもしれません。
石神のラスト「どうして!」の意味
ラストシーンで石神は、花岡靖子が自首したことで「どうして!どうして!?」と慟哭します。
このシーンは、観客の涙を誘うシーンの1つでもありました。
この「どうして」の意味はなんだったのか。
それは
「どうして、自首してしまったんだ」
「どうして、ボクを忘れて幸せに生きていく道を選んでくれなかったのか」
「どうして、花岡親子のための完璧な計画だったのに、花岡靖子自身が壊してしまうのか」
「どうして、ボクの生きる希望を壊してしまうのか」
そんな叫びだったのでしょう。
世間では、「花岡靖子が自分のために来てくれたことへの、喜びも感じたのでは」という意見もあったようです。
私個人の意見としては、喜びは少しもなかったのではないかと感じます。
石神の性格からすると、花岡親子を完全に罪から切り離すことが最高の幸せだったはず。
それだけを目的に、どんなこともやってきたのです。
花岡靖子が石神への罪悪感から出頭することは、石神の中では一番あってはならないことだったはずです。
石神の生きる希望は花岡親子でした。
自分を想ってほしいなんて見返りは求めない、ただただ花岡親子の幸せが石神の幸せだったのです。
計画がうまくいかなかったと同時に、幸せでいてほしいという願いさえも受け入れられなかった悲しみも叫びの中に含まれているのでしょう。
愛という献身
石神の愛は、深いものでした。
見返りは求めていません。
ストーカーのように相手に対して身勝手な行為はしません。
ただただそこに幸せに暮らしていてくれたら満足でした。
かすかに聞こえる笑い声や生活音を音楽のように聞いていることが幸せだったのです。
しかし、事件が起きてから事態は変わります。
石神は、花岡親子が不幸になってしまうことだけは許せなかったのです。
ある日の夜、花岡靖子は幸せな生活を脅かしてくる元夫を殺してしまいました。
石神は花岡親子の罪を隠蔽するために、あらゆる手助けや助言をします。
それはあろうことか、新たな殺人も含まれていたのです。
石神はなんの罪もないホームレスを殺害し、死体をすり替え、死亡推定時刻を変えるというトリックをしました。
ここには、花岡親子の幸せのためには、何の罪もないホームレスを殺害しても仕方ないという石神の身勝手さが感じられます。
数学に没頭し、人付き合いをあまりしてこなかった石神の極端な愛が悲劇を生んでしまったのです。
花岡親子がこのトリックを知ってしまったら、どういう感情になるかまでは想像できなかったのでしょう。
自分たちの罪を隠すために新たな殺人が起こっていたとわかったら、普通は平常心ではいられません。
石神にとって、自らをストーカーの殺人犯に仕立て上げたシナリオは完璧だったのかもしれません。
しかしそんな風にかばわれて、幸せに生きていける人がいるでしょうか。
石神の無償の愛は美しいようで、相手には抱えきれない身勝手なものだったのかもしれません。
天才の石神は、人の心の動きまでは計算できなかったのです。
石神のしたことは決して許されることではありません。
しかし、石神には幸せになってほしいとどこかで願ってしまう自分がいます。
もっと石神も報われるいい方法はなかったのかと、映画のあとで考えてしまいました。
その後について
石神や花岡親子のその後はどうなったのでしょう。
映画や原作にはその後のことは描かれていません。
なのであくまでも予想です。
石神のその後
石神が犯した罪は、死体遺棄や殺人罪など、とても重いです。
重いですが、前科もなく殺害したのは1人なので死刑になることはないでしょう。
石神の性格から、模範囚になると予想されるので普通の刑期より短くなる可能性もあります。
しかし殺人罪なので、10年以上は確実かと思われます。
花岡親子のその後
花岡靖子は、明らかな殺意があり元夫を殺害しています。
しかし計画性はなく、犯行に及ぶ前に元夫は娘の美里に暴力をふるっていました。
殺人罪には問われますが、石神ほどの罪にはならないと考えられます。
娘の美里も、殺人を手助けしたという形ではありますが、未成年ということもあり大きな罪にはならないでしょう。
しかし、母親が殺人犯という枷は一生背負っていくのかと思うと、美里の未来を勝手に心配してしまったりもします。
罪を償った後は、もと住んでいた場所からは遠く離れ、誰も知り合いのいない土地に移り住むのではないでしょうか。
石神と花岡靖子の関係はどうなる?
殺人という大きな秘密を共有していた石神と花岡靖子。
そんな石神と花岡靖子は、罪を償った後どうなるのか。
結論から言うと、石神と花岡靖子が結ばれることはないと考えられます。
花岡靖子は殺人の隠蔽を石神に協力してもらっていました。
石神を見ると、花岡靖子は殺人を思い出してしまうでしょう。
花岡靖子は石神に罪悪感は抱いていても、恋愛感情があったようには見えませんでした。
きっと花岡靖子は、石神とはもう会いたくないと感じるはずです。
そして石神も、そのことをわかっていると思うので、花岡靖子の前には姿を現さないのではないでしょうか。
とても切ないですね。
石神はもう、隣人として花岡親子の幸せをそっと見守ることさえできないのです。
石神が許されない罪を犯した事実を消すことはできないのです。
ささやかなことに幸せを感じられる石神が、花岡親子と出会う前に、想い合える人と出会えなかったことに悔しささえ感じてしまいます。
石神が罪を犯している場面はさすがに残酷で気持ち悪いと感じ、受け入れられませんでした。
しかし、しっかりと罪を償い出所したあとに、またささやかな幸せを見つけて穏やかに暮らしてほしいと願ってしまいます。
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「容疑者xの献身」作品概要
原作は東野圭吾氏の小説「容疑者xの献身」。
フジテレビ系テレビドラマ「ガリレオ」の劇場版。(テレビドラマは第一シーズンは2007年、第二シーズンは2013年に放送)
第33回報知映画賞では、堤真一さんが最優秀主演男優賞を受賞。
第32回日本アカデミー賞では、優秀作品賞・優秀助演男優賞(堤真一さん)・優秀助演女優賞(松雪泰子さん)・話題賞(作品部門)を受賞。
キャスト
湯川学 | 福山雅治 |
石神哲哉 | 堤真一 |
内海薫 | 柴咲コウ |
草薙俊平 | 北村一輝 |
花岡靖子 | 松雪泰子 |
花岡美里 | 金澤美穂 |
スタッフ
監督 | 西谷弘 |
脚本 | 福田靖 |
音楽 | 福山雅治、菅野祐悟 |
主題歌 | 「最愛」KOH+ |
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