2010年に公開された松たか子主演の映画
「告白」
過激な内容や映像があるため、R15+指定で放映されました。
確かに、目を覆いたくなるような描写が多かったです。
血が苦手な人は見ない方がいいかも。
どうなるの?と作品に引き込まれるストーリー性もありますが、観た人によって感想が違ったりする考えさせられる映画でもあります。
ラスト、森口が「な~んてね」と苦痛の表情で言った意味とは?
鼻血が出たわけ、序盤に置かれた伏線なども考察します。
「告白」あらすじ
3月25日、とある教室。
終業式後の1年B組のホームルームで、担任の森口が告白を始める。
「愛美は死にました。でも事故死ではありません。このクラスの生徒に殺されたんです。」
騒然としていた教室は一瞬静まりかえる。
そして森口は、犯人である修哉と直樹の牛乳にHIVに感染した血液を混入したと言う。
混乱に陥る教室。
新学期、修哉はイジメの対象になり、直樹は不登校になる。
修哉と直樹を絶対に許せない森口。
そして修哉と直樹にもそれぞれの背景があった。
登場人物たちの告白により、物語は展開していく。
森口の復讐は、2人にどんな結末を迎えさせてしまうのかーーーー
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「告白」感想・考察(ネタバレあり)
観終わった後、少し心がずーんと重くなりました。
そして見ていていろいろ思うところが出てくるこの映画。
まずは修哉の鼻血が出た理由から考察していきたいと思います。
※ネタバレありなので、まだ見ていない方は見てからの閲覧をおすすめします!
修哉がラスト鼻血を出したのはなぜ?
修哉はラストのシーンで鼻血を出します。
自分で作った爆弾を自分でスイッチを押し、母親を殺してしまったということを森口から聞かされた後です。
このことについて、「HIVが発症したから?」と疑問の声も出ました。
きっとこれはそうではなく、自分で大好きな母親を殺してしまったという事実を受け入れきれずに興奮状態になり鼻血を出してしまったのでしょう。
そもそも牛乳に血液を入れたということは、森口の嘘だったのです。
桜宮の血液を注射器で抜くも桜宮に気づかれ、血液を流しに流されていたシーンからもその計画は失敗していることがわかります。
そしてもし血液を牛乳に混ぜていても、HIVに感染する確率はゼロに近いと森口も語っていました。
そのことから、修哉の鼻血はHIVの影響ではないと言えます。
ラストの「な~んてね」を深掘り
ラストシーン、森口が「ここから、あなたの更生の第一歩が始まるんです。…な~んてね」と言って映画は終わります。
目に涙を溜めて、とても辛そうに言ったこの台詞。
この「な~んてね」はどこにかかる「な~んてね」なのか話題となりました。
私はここに、森口の悲痛な思いが隠れているんじゃないかなと思います。
森口は以前、生徒とできる限り同じ目線に立ちたいと思う真面目な教師でした。
でも愛美が殺されてからは、森口の言葉をそのまま借りれば「心の中の大切な何かが死んでしまった」のです。
以前の森口ならば、罪を犯した生徒には更生させたかったはず。
熱血先生の桜宮を尊敬してたのだし、そう思ったはずです。
でも愛美を亡くしてからは、復習の鬼となり生徒を精神的に追いつめ、絶望させます。
この台詞を言うことによって、更生させたいとは全く思っていない変わってしまった自分を改めて実感し、この苦痛の表情をしているのではないでしょうか。
「な~んてね」は、「更生が始まるなんて全く思ってないよ」という意味が込められているのです。
「同じ目線に立つ」という伏線
森口は映画の序盤で
「私が自分に設けたルールは2つだけです。生徒を呼び捨てにしない。そしてできる限り生徒と同じ目線に立ち、丁寧な言葉で話す。」
と話します。そしてその後
「あなた方は嘘をつくのが実に上手ですから。」
とも話します。
これは何を意味するのか。
森口は復讐の鬼となっても、最後まで自分のルールを守っています。
生徒を呼び捨てにしていないし、ずっと丁寧な言葉でしゃべっています。
そして「できる限り生徒と同じ目線に立つ」ことも。
実に嘘が上手な生徒たちと同じ目線に立つ=森口も生徒と同じように上手に嘘をついているのです。
これは、森口が話すことには上手な嘘も含まれているということの伏線なのです。
森口の嘘
森口は前述したように、生徒に嘘をついていると思われる箇所があります。
- 牛乳に血液を混ぜたこと
- 修哉の母の大学の研究室を爆破したこと
【嘘:1】牛乳にHIVの血液を混ぜたということ。
これが嘘だったことは、後半で森口が美月に告白したことで明らかになります。
血液は桜宮に気づかれ、流しに流されます。
【嘘:2】修哉の母の研究室を爆破したこと。
修哉は体育館ごと全校生徒を爆破させようとスイッチを押します。
しかし体育館は爆発しないし、そもそも体育館に爆弾はなくなっていました。
森口は
「爆弾を修哉の母の研究室に移動させた。母ごと研究室が爆破した。」
と修哉に電話で告げます。
これも森口が修哉についた嘘だと考察します。
実際には爆破させてないのではないかと思うのです。
まず、修哉が体育館に設置した爆弾を森口は朝早くに解除しています。
その後森口は、爆弾を修哉の母の元へ運び、研究室の机の下に置いてきたというのです。
そしてその爆破を森口は見届けたと。
しかしその後すぐに森口は修哉のいる学校の体育館に現れます。
速い。
あまりに移動が速いです。
瞬間移動でもしたのか。
中学校と大学の研究室が隣にあるぐらいでなければ、この短時間での移動は不可能です。
それに、いくら修哉が爆弾を作ってスイッチを押したからといって、修哉の母の元に爆弾を置いたのは森口です。
殺したのは結局森口になってしまいますよね。
まぁもう家族を失い自暴自棄になってる森口にとって、殺人罪に問われてもどうでもいいかもしれませんが。
よって、研究室を爆破したということは、修哉を精神的に追いつめるためだけの嘘だと思います。
よく考えれば嘘だと感づきそうなことですが、すぐ信じてしまう浅はかな中学生をあざ笑ったような森口が見えた気がしました。
母と子の物語
この物語は、結局は母と子の物語だと感じました。
修哉とその母親。
直樹とその母親。
森口と愛美。
この3組の親子がこの物語の軸となっています。
母の愛を求める息子、修哉。
本当の息子を見ているようで見ていない、直樹の母親。
愛する娘を奪われた母、森口の怒り。
異常な行動が見られる人物がとても多かったですが、ただの異常者で片付けられないところがこの物語の怖いところなのではと感じます。
結局、母の愛についての話なのです。
修哉を捨ててしまった無責任な母親は、母の愛を受けたい一心の、殺人をなんとも思わないモンスター修哉を生みます。
直樹の母親は、直樹を愛し、直樹に依存し甘やかし続けた結果、直樹は勉強にも運動にも努力できず正しい判断もできない息子に育ちます。
どちらも母の愛は無責任であったり、ゆがんでいます。
母の愛が息子に与える影響力は、人生を左右するほどとても大きいことがわかります。
そして子供を愛するが故に復讐の鬼となった森口。
愛娘を殺した2人を追いつめるためなら、人としての道理をも捨ててしまいます。
母である自分として正直な感想を言うと、もし森口のように浅はかな中学生に自分の娘を殺されたら、正気でいられるかはわからないです。
森口は教師失格な異常な行動を繰り返しますが、母としては狂っても仕方がないとさえ思ってしまうのです。
これほどに、母から子供への愛情は深いものなのです。
そして子供が母へ求める愛情もとても大きいのです。
この母と子の愛ゆえに起きた悲しい事件は、なんとも言えない後味の悪いものでした。
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「告白」作品概要
原作は湊かなえ氏の「告白」。
第34回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀脚本賞・最優秀編集賞を獲得。
キャスト
森口悠子 | 松たか子 |
下村優子(直樹の母) | 木村佳乃 |
寺田良輝(ウェルテル) | 岡田将生 |
森口愛美 | 芦田愛菜 |
渡辺修哉(少年A) | 西井幸人 |
下村直樹(少年B) | 藤原薫 |
北原美月 | 橋本愛 |
スタッフ
原作 | 湊かなえ「告白」 |
監督・脚本 | 中島哲也 |
主題歌 | レディオヘッド「Last Flowers」 |
中島哲也監督は、2004年「下妻物語」、2006年「嫌われ松子の一生」、2014年「渇き。」の監督・脚本をつとめている。
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