映画「誰も知らない」は残酷な実話がモチーフとなった作品!ゆきの死因についてなど(考察・感想)

映画
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2004年に公開された是枝裕和監督の映画

「誰も知らない」

柳楽優弥さんがカンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞したことでも有名です。

1988年に実際に発生した巣鴨子供置き去り事件をモチーフに作られた作品。

映画もとても衝撃的ですが、実際の事件はさらに残酷で信じられない内容でした。

映画「誰も知らない」は、子供たちが親を求める姿、特に親を求める目が印象的です。

観ていて苦しいですが、一度は観てほしい作品。

ゆきの死因も、映画と実際の事件とで比較しました。

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「誰も知らない」のモチーフとなった巣鴨子供置き去り事件

1988年に実際に起きた事件「巣鴨子供置き去り事件」の詳細がコチラです。

1988年7月、東京都豊島区西巣鴨のマンションで、当時14歳の長男・妹2人(7歳と3歳)、そして乳児の白骨化した遺体が見つかる。

母親は不在で、妹2人は衰弱していた。

妹2人は栄養失調による衰弱だった。

遺体の乳児は、生まれてまもなく病気で亡くなったため、消臭剤とともにビニール袋に入れられ押し入れにしまってあったという。

そして9ヶ月間子供だけで生活していたこと、子供全員の戸籍がないことも発覚。

子供たちは出生届が出されておらず学校にも通っていない状態だった。

1987年10月頃(事件発覚の約9ヶ月前)、母親は新しい恋人と同棲するために家に20万円だけを置いて蒸発していた。

たまに思い出したように数万円程度送ってくるだけだったが、そのうち送金も無くなる。

警察に見つかった時には、ほぼ所持金はなく電気もガスも止められていた。

14歳の長男が妹たちの世話をすべてやっていたという。

母親が出て行った後、少しして長男に友人2人ができる。

マンションの1階にあるコンビニで知り合った12歳の友人2人だ。

次第に家は友人たちの溜まり場になる。

ある日、2歳の妹が友人のカップラーメンを黙って食べたことに腹を立て、友人が妹をなぐった。

妹がお漏らしをしたため、押し入れから落とす・踏むなど、暴力はエスカレート。

もう1人の友人と長男も暴力に加わったという。

そのうち2歳の妹はぐったりし、亡くなってしまう。

長男と友人は秩父市にある雑木林に2歳の妹を埋めに行った。

そのうち家賃が滞納してたのを不審に思い大家が訪ね、子供だけで生活していることがわかりやっと警察に通報されたという。

母親は事件をテレビのニュースで見て出頭し、保護責任者遺棄容疑で逮捕された。

長男は教護院(現在の児童自立支援施設)に送られ、少年2人はまだ12歳だったということもあり補導で終わった。

保護された7歳と3歳の妹2人は、母親と同棲相手が結婚して養育することになった。

30年以上前の事件ですが、信じられない事件です。

母親は言うまでもないですが、それぞれの子供たちの父親が何も取り上げられないのも違和感と憤りを感じます。

ちなみに子供たちの父親は全員違うそうです(絶句。)

「誰も知らない」あらすじ

トラックからアパートに荷物が運び込まれてゆく。引っ越してきたのは母けい子(YOU)と明(柳楽優弥)、京子(北浦愛)、茂(木村飛影)、ゆき(清水萌々子)の4人の子供たち。だが、大家には父親が海外赴任中のため母と長男だけの二人暮らしだと嘘をついている。母子家庭で4人も子供がいると知られれば、またこの家も追い出されかねないからだ。その夜の食卓で母は子供たちに「大きな声で騒がない」「ベランダや外に出ない」という新しい家でのルールを言い聞かせた。
子供たちの父親はみな別々で、学校に通ったこともない。それでも母がデパートで働き、12歳の明が母親代わりに家事をすることで、家族5人は彼らなりに幸せな毎日を過ごしていた。そんなある日、母は明に「今、好きな人がいるの」と告げる。今度こそ結婚することになれば、もっと大きな家にみんな一緒に住んで、学校にも行けるようになるから、と。
ある晩遅くに酔って帰ってきた母は、突然それぞれの父親の話を始める。楽しそうな母親の様子に、寝ているところを起こされた子供たちも自然と顔がほころんでゆく。だが翌朝になると母の姿は消えていて、代わりに20万円の現金と「お母さんはしばらく留守にします。京子、茂、ゆきをよろしくね」と明に宛てたメモが残されていた。
この日から、誰にも知られることのない4人の子供たちだけの”漂流生活”が始まった―――。
引用:是枝裕和オフィシャルサイト

「誰も知らない」予告編

引用:https://www.videx.jp/

「誰も知らない」考察・感想(ネタバレあり)

母親を待つ子供たちの目、母親を求める子供たちの姿が本当に印象的でした。

母親は子供をぶつわけでもなく、一見虐待しているように見えないのもこの物語の恐ろしさだと感じます。

母親は陽気で、子供と接するときは優しくて、でも男を優先して出て行きます。

自分の幸せが1番。

本当に勝手な親です。

映画の中で

「私は幸せになっちゃいけないの~?」

と母親が長男に言う台詞があります。

いやいやいやいや…

少なくともこの状況で子供に言っていい台詞ではありません。

長男は何も言い返せなくて黙ってしまいます。

子供たちからも同じ台詞を言い返してやれ!と思いましたね。

子供たちに幸せの権利はないのかと。

子供は生まれたときから、1人の人間として尊重されるべきです。

この母親は育児をしなければならないという現実から逃げているようにも見えます。

観ているときは身勝手な母親にイライラしてしまいました。

でももしかしたら、この母親にも救済が必要だったのかもしれないと後から感じたのも事実です。

ゆきの死因を映画で変えた理由とは?

ゆきは母親が出て行ってしまったあとに亡くなっています。

実際の事件でも女の子が亡くなっていますが、映画ではその死因が変えられていました。

なぜなのでしょう。

まず映画と実際の事件の違いを比較します。

まずは映画↓

  • 映画ではゆきは4~5歳の設定(次女)。
  • イスに乗ってベランダの外を覗こうとして、イスから落ち頭を打つ
  • 長男は外出中で、帰ってきたときに動かないゆきを見つける。
  • コンビニで湿布などを万引きし、懸命に処置をするが、翌日冷たくなって死んでしまった。

そして実際の事件↓

  • 実際の事件では2歳の三女。
  • 長男の友人2人(12歳)の溜まり場になっていた家。
  • 友人が自分のカップラーメンを三女が勝手に食べたことに腹を立て殴る。
  • さらにお漏らしをしたことで、暴力はエスカレート。
  • 押し入れから落とすなどして死なせてしまった。

書いていてとても気分のいいものではありません。

実際の事件は、何も抵抗できない幼い命に対して残虐極まりないです。

映画ではイスから落ちて亡くなっているので、事件と言うより事故です。

映画ではなぜ設定を変えたのでしょう。

きっと是枝監督は育児放棄や、それによる子供たちの生活に焦点を当てたかったのだと思います。

友人の暴力まで忠実に再現してしまっては、映画の本当に伝えたいテーマがずれてしまうからかもしれません。

でもどっちの死因にしても、保護者がいれば防げたかもしれないのは変わらないですね。

「誰も知らない」フリをしている周囲

映画のタイトルは「誰も知らない」ですが、本当に誰も知らなかったのでしょうか。

そんなはずはないです。

平日に学校に行っていない長男は、昼間にコンビニなどでよく食料を調達しています。

商店街にもよく出かけています。

母親がいなくなってからは、コンビニで残飯をもらったりもしています。

学校に通っていないことは明白です。

でも誰も気にすることなく、気づこうとすることなく、大家が通報するまで事は明るみになっていません。

ちょっとおかしいなと思っても、他人に踏み込まない社会が浮き彫りになっている気がします。

唯一、女性のコンビニ店員が気にして「警察に行かないの?」と長男に言ったことがありました。

でも長男が「兄妹がバラバラになっちゃうから」と拒否しました。

そしてこのコンビニ店員は引き下がります。

きっともっと知ろうとしてあげてたら。

力になろうとしてあげたら。

何か結末は違うものになったのかなと、もどかしくなります。

少なくともコンビニの店員たちや、長男がお金を借りに行った父親たちは、なんとなく事情を察せたはず。

母親だけが責められがちですが(もちろん責任は1番重大です)、周りの大人がもっと周りの子供を守っていく社会が大切なのではと考えさせられます。

言わずと知れた柳楽優弥さんの目力

是枝監督もうならせた柳楽優弥さんの目力。

ものを語る目と言うんでしょうか。

まっすぐに見つめる目。

憂いを帯びた目。

諦めた目。

柳楽優弥さんの演技を見るだけでも価値があるんじゃないかってくらい。

いや、是枝監督の脚本あってのものっていうのはわかってるんですが。

観ている人を引き込むってこういうことを言うんだなぁと感じさせてくれます。

必見。

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「誰も知らない」作品概要

是枝監督が構想から16年かけてできた作品。

映画のキャッチコピーは「生きているのは、大人だけですか」

主演の柳楽優弥さんが、2004年の第57回カンヌ国際映画祭で史上最年少・日本人初最優秀主演男優賞を獲得。

「誰も知らない」キャスト

福島明柳楽優弥
福島けい子YOU
福島京子北浦愛
福島茂木村飛影
福島ゆき清水萌々子

是枝監督は子供たちに台本を渡さなかったといいます。

「たまたまオーディションで選んだ4人の子供たちが、それまで演技経験のない子たちで、一度台本を渡してリハをやってみたら、下手だったんですよ。すごく。これはまずいなと思って。で違う形でできないかなと思って台本渡すのをやめました。その場で僕がお兄ちゃんがこういうから、こう言ってごらん。みたいな、口伝えでやってみたんです。」

引用:SHORTSHORTS是枝監督トークイベント(2015年5月)

子供たちの自然な台詞は、台本なしのやり方で生まれたんですね。

「誰も知らない」スタッフ

監督・脚本・編集・プロデューサー是枝裕和
音楽ゴンチチ

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本ページの情報は2023年10月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

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