映画「幼な子われらに生まれ」その後はどうなった?感想・考察(ネタバレあり)

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2017年に公開された浅野忠信×田中麗奈出演の映画

「幼な子われらに生まれ」

ひとつの家族をドキュメンタリーとして見せられているような映画でした。

人間味のある登場人物たちに、嫌悪感を抱くこともありましたが、考えさせられることも多かったです。

ラストははっきりとした答えが出ないままだったので、私なりにどうなったのか考察してみました。

「幼な子われらに生まれ」あらすじ

バツイチ、再婚。一見良きパパを装いながらも、実際は妻の連れ子とうまくいかず、悶々とした日々を過ごすサラリーマン、田中信(浅野忠信)。妻・奈苗(田中麗奈)は、男性に寄り添いながら生きる専業主婦。キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことを楽しみにしているとは言えない。

実は、信と奈苗の間には、新しい生命が生まれようとしていた。血のつながらない長女はそのことでより辛辣になり、放った一言―「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」。今の家族に息苦しさを覚え始める信は、怒りと哀しみを抱えたまま半ば自暴自棄で長女を奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会う決心をするが・・・。

引用:「幼な子われらに生まれ」公式HP

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「幼な子われらに生まれ」感想・考察(ネタバレあり)

明確に伝えたいことがはっきりある映画というより、見た人に様々な感情を持たせるような映画でした。

きれいに解決するわけではないので少しもやっとしますが、現実ってこんなものなのかもと思わされたり。

見終わった後に、考える余白をくれたような感じもしました。

人間くさい登場人物たち

この映画に出てくる登場人物みんながとても人間くさい。

みんないい部分も持っているけど、でもちょっと嫌な部分を持っているんです。

でも人間ってそんなものですよね。

映画を見た人は、その人間くささに嫌悪感をいだいたり、逆に共感を抱いたりするんじゃないでしょうか。

嫌だなと思う反面、いい部分と悪い部分を両方持ち合わせている登場人物たちにどこか共感してしまうのです。

奈苗の元夫の沢田は、感情的になると妻や子供を殴っていたような最低の男です。

そんな暴力的な部分には全く共感できないけど、久しぶりに子どもと会うとなるとスーツを着てきたり、ぬいぐるみのプレゼントを買ってきていたりしている。

そんなことで昔の暴力が許されるわけではないですが、子どもに喜んでほしいと思う人間味のあるところが描かれています。

信も、仕事終わりはまっすぐ家に帰り、ケーキやおもちゃを買っていったり、とても家族想いの父親をしています。

ちょっと機械的にも感じますが、優しくてよい父親であろうと努力しています。

しかし、自身の様々なストレスが溜まりすぎた結果、奈苗に「子どもを堕ろして離婚しよう」と言い放ちます。

これはひどい。

何より、赤ちゃんの命を軽んじているようにも思えます。

ただ、自分が抱えるストレスに耐え切れず、他を思いやれなくなり悪態をついてしまう。

これは少し共感できてしまいます。

信の場合はちょっと度が過ぎますが、こんな風に自分にいっぱいいっぱいになり、身近な人を傷つけてしまう自分も思い当たらなくはないのです。

人間だれしもそんな部分があるのではないでしょうか。

奈苗も、気楽に過ごしているあっけらかんとしたかわいい奥さんのようです。

しかし、思春期の娘には「どうしちゃったの?!」ととがめるばかりで、寄り添おうとはしません。

みんなそれぞれ、自分のことで精いっぱいで、周りを思いやれなくなってしまう。

嫌な部分に嫌悪感を抱きつつも、どこか他人事ではない気がします。

嘘っぽいいわゆるイイ人が出てこない分、ひとつの家庭を切り取ったドキュメンタリーのようにも感じました。

思春期の難しさ

長女の薫は、キーパーソンだったように思います。

ネット上のどこかで「結局、薫のせいで家庭崩壊した話だ」というような感想を見ました。

私はこの物語は、そこが焦点ではないと思いました。

もちろん、いろんな感想を抱くのはそれぞれの自由なので(私含め)、とがめているわけではありません。

私も正直、はじめは「薫が少し大人になれば、平和な家庭になるのにな」と思って見ていました。

でも途中から、自ら思春期を経験した身として、思春期の娘を持つ身として、じわじわと理解できてきたんです。

本当に思春期の女の子は難しい。

言いたくないと思っていても、嫌な言葉が口から出てきちゃうんですよね。

これは、その子の性格のせいだとかそんなことではないのです。

どうしようもないイライラや、どうしようもない不安がわきでてくるんです。

そして周りを巻き込んで、イライラをぶつけてくる。

それはステップファミリーでも、そうでなくてもあることだと思います。

だから、新しい赤ちゃんに対する薫の嫉妬は、3歩も4歩も下がってみてみれば、ただの反抗期ともいえるのです。

そう思えば実はかわいいものなのかもしれない。

ただただ、父である信に対する甘えなのだと思います。

かわいいと言えないくらい家族が大きく揺さぶられてはいますが、これもステップファミリーの試練というべきなのでしょうか。

大きく見えてもまだ子どもです。

愛されていると確信したい。

どの思春期の子供も突き詰めてみれば、心の底にはこれがあるのだと思います。

表面に出てくるものはそれぞれ個々で違うとは思いますが、試しているような行動や言動をすることも多いです。

薫は「前のお父さんに会いたい。あなたは本当のお父さんじゃない」という言葉で、信を試していたのでしょう。

しかし信自身は薫に対して実の子供ではないという遠慮があるからか、結局薫と距離をとってしまいます。

これも薫が不安定になる要素になってしまったのでしょう。

何をするのが正解かは、本当に子どもそれぞれによって違うかとは思います。

ただこの物語の場合、子供を堕ろしたり、離婚したり、元夫に引き渡したりするのは正解ではないことは明らかです。

とにかく、どんな悪態をつかれても、愛し受け入れ続けることが唯一できることなのだと思います。

傷つけられてもニコニコしていろと言っているのではなくて。

傷ついたことは「傷ついたよ」と伝えることは別にいいのだと思います。

見放したり、傷つけ返したり、手を出したり、それは絶対にしてはいけないことなのだと思います。

終盤で、泣いていた薫の肩を信が抱き寄せていたシーンは印象的でした。

会話はなくとも、2人の結びつきが見えた気がします。

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「幼な子われらに生まれ」その後はどうなったのか?(ネタバレあり)

信と奈苗の赤ちゃんが生まれるシーンが最後のシーンです。

赤ちゃんが生まれた後の彼ら家族はどうなったのでしょうか。

信と薫の確執は解決したのかなと思っていたら、薫は中学を卒業したら千葉のおばあちゃんちに引っ越す予定というこになっていました。

夏休みや冬休みはおばあちゃんちで過ごして、千葉で暮らすリハーサルをしているといいます。

まだラストシーンでは薫が6年生の冬だったと思うので、あと約3年間は信がいる家族で過ごすことになります。

この3年間で薫と信の距離がどう変わるかで、本当に千葉に引っ越すかが決まるのでしょう。

ただひとつ言えることは、この家族に赤ちゃんが加わることで、今までの環境と同じではなくなるということ。

まさにタイトル通り「幼な子われらに生まれ」なのです。

ここから先の展開は映画を見ている人の個々の想像にゆだねられているのです。

私の個人的な予想は、結局薫は千葉には引っ越さずに、一緒に暮らしていくのではないかと思います。

もちろん、信次第ではあると思います。

信が赤ちゃんが生まれたことで、薫との距離をまた広げてしまえば薫は千葉へ行ってしまうでしょう。

でも信が前夫との騒動で、ステップファミリーの父親として少し成長しているのではと思うのです。

そして薫も、長い休みには家族から距離を置ける千葉という場所ができ、落ち着いて物事を考えられる時間もできると想像できます。

薫自身がこの家族を受け入れる準備もしやすいと思うのです。

家族5人が幸せに暮らす未来に期待をこめて、きっと薫は高校もこの家族のもとから通うと私は予想しました。

「幼な子われらに生まれ」作品概要

原作は1996年発行の重松清氏「幼な子われらに生まれ」。

第41回モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞受賞。

第42回報知映画賞で田中麗奈さんが助演女優賞、三島有紀子氏が監督賞。

「幼な子われらに生まれ」キャスト

田中信浅野忠信
田中奈苗田中麗奈
田中薫南沙良
田中恵理子新井美羽
沙織鎌田らい樹
沢田宮藤官九郎
友佳寺島しのぶ

「幼な子われらに生まれ」スタッフ

原作重松清「幼な子われらに生まれ」
監督三島有紀子
脚本荒井晴彦
音楽田中拓人

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