2022年公開の、二宮和也さん主演の映画
「ラーゲリより愛を込めて」
戦後、こんな過酷な環境が11年近く続いていたのかと、驚きを隠せませんでした。
目を覆いたくなる場面もありましたが、見ておかなくてはならないような感覚にもなりました。
一度は見てほしい作品です。
この作品は、実話なのか。
犬のクロは本当にいたのか。
よく出てきた営倉・そして南京虫とは何なのかなどを調べたいと思います。
「ラーゲリより愛を込めて」あらすじ
第二次大戦後の1945年、厳冬の世界・シベリア。
わずかな食料での過酷な労働が続く地獄の強制収容所・ラーゲリに、山本幡男はいた。
彼は絶望する抑留者たちに、「生きる希望を捨ててはいけません。帰国の日は必ずやってきます」と訴え続け…。
引用:U-NEXT「ラーゲリより愛をこめて」
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※以下よりネタバレありになりますので、映画を観てからの閲覧をおすすめします。
「ラーゲリより愛を込めて」は実話?

「ラーゲリより愛を込めて」は実話を基にして制作された作品です。
二宮和也さん演じる主人公の山本幡男さんも、北川景子さん演じる妻のモジミさんも実在していた人物でした。
そして、シベリア抑留ももちろん実際にあった出来事です。
1945年、第二次世界大戦の終戦後。
満州(現在の中国東北部)にいた日本軍捕虜や民間人約60万人が、労働力としてシベリアなどに抑留生活を強いられました。
ソ連側の労働力不足を補うためだったとされています。
映画でもあったように、日本人軍捕虜はソ連軍に「日本に帰れる」と騙されて列車に乗せられました。
着いた先は強制労働収容所(ラーゲリ)。
その環境は劣悪なものでした。
零下40度にもなるシベリアで、飢え・重労働・寒さ・感染症と闘いながら過ごしたそうです。
このシベリア抑留では約6万人もの死者を出したといいます。
死者を出した1番の理由は飢餓でした。
山本幡男さんは映画の通り、仲間たちに生きる希望を見失わないよう導いていたそうです。
俳句を作る「アムール句会」という文化部を立ち上げ、捕虜たちに重労働の辛さを忘れる楽しい場を提供していたといいます。
それによって自殺を思いとどまる人もいたのだとか。
そして1954年、山本さんは末期の咽頭がんを患っていることがわかります。
仲間たちに慕われていた山本さんは、遺書を残すようすすめられました。
日本語で書き残したものを所持することはスパイ行為とみなされ、ソ連軍に没収されます。
そこで仲間たちは山本さんの遺書を暗記して家族のもとに届けようと決意しました。
まさに実際も、映画と同じように仲間たちが暗記して日本へ持ち帰ったのです。
山本さんは1954年8月、45歳でこの世を去りました。
シベリア抑留から仲間たちが帰国できたのはその約2年後。
遺書は6人に託され(映画では3人でしたね)、帰国後まもなく妻のモジミのもとへ届けられました。
映画はほぼ実話だったということですね。
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「ラーゲリより愛を込めて」クロは本当にいた

前章で、この物語は実話を基にしているとわかりました。
実は、黒い犬のクロも実際にいたのだというから驚きです。
日本人捕虜たちが、自分たちの貴重な少ない食料をクロにも分けていたのだといいます。
クロは日本人たちになつき、ソ連軍には吠えていたそうです。
そして、帰国の日、クロが船を追いかけて流氷漂う海に飛び込んだことも事実でした。
映画のフィクションだろうと思っていたのですが、本当でした。
抑留者引き揚げの場となった舞鶴市にある舞鶴引揚記念館には、しっかりとクロの事実が展示されています。
「ラーゲリより愛をこめて」営倉・南京虫って?

映画では、営倉に入れられる松田さんや山本さんが何度か映りました。
あまりにひどいので目を覆いたくなりました。
営倉とは、懲罰用の独房・拘禁施設のことです。
規律違反・命令不服従・脱走未遂・ソ連兵との口論でも営倉に入れられる場合があったようです。
暗く狭い独房で、床は板張りかコンクリート、日の光はほとんど入りません。
食事も少量で、暖房もなく、環境の過酷さから凍傷や栄養失調で亡くなる人もいたといいます。
そして、こんな過酷な営倉に大量に発生していた南京虫。
南京虫は、トコジラミとも呼ばれています。
トコジラミは今でも知られていますね。
吸血性の昆虫で、体長は5mmから8mm程度。
刺されると赤く腫れてかゆみや炎症を引き起こします。
もう吸血してくる虫の集合体ってだけで鳥肌ものです。
地獄のような環境の営倉の中で、南京虫に襲われるわけです。
正気の沙汰ではありません。
山本さんはそこに約1か月入っていたこともあったそうで。
想像を絶します。
「ラーゲリより愛を込めて」感想

恥ずかしいながらも、戦後こんな事態が起き、苦しい思いをしている人々が大勢いたことを私は知りませんでした。
もしかしたら学生の時学んでいたのかもしれませんが…
たった約70数年前の出来事です。
ベタな言い方になってしまうのがもどかしいですが、戦争だけでなく戦後のこういった事実も次の世代に語り継がなくてはならないと強く感じます。
そしてこんな状況の中でも希望を捨てず、希望を周囲の仲間に広める山本幡男さんという強い人を知れてよかったと思いました。
本当になんて強い人なのだろうと感銘を受けました。
絶望の中で希望や楽しみを忘れずに生きることは、今の時代にも大切なことです。
私はこの作品を観て「生きることとは何か」を突き付けられたような気がします。
シベリア抑留は、生きていてなんの意味があるんだという環境でした。
なんの楽しみも希望もない。
監視下の中、ただただまずい少量の食事をし、重労働に駆り出される。
それの繰り返しです。
でも、人を人とも扱われない環境の中で、山本さんは勉強会を開き、俳句の会を作り、仲間たちの心の中に豊かな部分を取り戻そうとしたのです。
それが生きていくうえでどれほど大事なことか。
働きづめで、寝て食べる。
それでも生きていくことはできます。
ただ、何のために生きているのか。
生きていくうえで、働くことは必要なことです。
ただ心を豊かにできる時間や希望を持つことは、そこに必ず必要なんだと改めて感じさせられます。
もちろん、生死が関わるシベリアの環境とは規模が違いますが、根本的に生きていくということはどういうことかは同じなんだと思います。
どんな時も、人は希望を捨てずに生きるべきだと。
映画の序盤、列車で収容所へ運ばれる中、山本さんは歌を歌います。
「こんな時に何だ」「やめろ」と怒り出す人もいます。
気がおかしくなったと感じた人もいたでしょう。
でも、見終わって感じたのは、これが山本さんのすべてを表していたんですね。
こんな時だからこそ歌を歌う。
こんな時だからこそ、笑う。
これは戦争映画でしたが、戦争のむごさ無意味さを訴えてくるだけではありませんでした。
生きていくうえで大切なことを改めて確認させられたように思います。
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「ラーゲリより愛を込めて」作品概要
「ラーゲリより愛を込めて」は2022年12月に公開。
原作は辺見じゅんさんのノンフィクション作品、「収容所(ラーゲリ)からの遺書」。
第46回日本アカデミー賞で、二宮和也さんが優秀主演男優賞。
第65回ブルーリボン賞では、二宮和也さんが主演男優賞を受賞した。
キャスト
| 山本幡男 | 二宮和也 |
| 山本モジミ | 北川景子 |
| 松田研三 | 松坂桃李 |
| 新谷健雄 | 中島健人 |
| 山本顕一(壮年期) | 寺尾聰 |
| 相沢光男 | 桐谷健太 |
| 原幸彦 | 安田顕 |
スタッフ
| 原作 | 辺見じゅん「収容所からの遺書」 |
| 監督 | 瀬々敬久 |
| 脚本 | 林民夫 |
| 美術 | 磯見俊裕、露木恵美子 |

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